ビジョンで組織を動かす
業種 | 飲料メーカー |
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テーマ | ビジョンを描く |
規模 | |
対象 | 管理職 |
ビジョンで組織を動かす。
よく語られることですが、それを実感する機会は、どのくらい あるでしょうか?
ビジョンとは、山登りに例えるならば、
「山頂から見える景色」。
本人がその景色を本当に見たいと思っていなければ、相手にそのイメージは伝わりません。
●研修当日 全国の辣腕営業部長が集まった
今回ご紹介したいのは、飲料メーカーの管理職を対象に行ったエンビジョング研修の事例です。
エンヴィジョニング(envisioning )とは、ビジョンを描く「エンビジョン」(envision)という動詞の名詞形。
つまり、「ビジョンを描くこと」「ビジョンを伝えること」「ビジョンに周囲を巻き込むこと」を意味します。
今回の事例でも、上司から「行って来い」と言われて来た人もいれば、自分から手を挙げて参加した人もいます。
名古屋支店長のAさんもその一人。
「ビジョンを語れるようになりたい」。
そう言って、自分から志願して来ました。
Aさんの当初のビジョントークはこうでした。
「今1%以内の範囲でシェア争いをしているけれども、これを5%以上引き離してトップに立ちたい」
自分の役割や戦略からビジョンを語るAさん。
頭の中で準備してきたものを読み上げるような形です。
ただ、目指していることは伝わりますが、なぜか、Aさんの言葉に聞き手の心は動きません。
Aさん自身も、研修参加者の心を動かせていない自分のトークに焦りを感じ始めていました。
●Aさんの心はなぜ気が付いたのか?
このプログラムでは、終盤のビジョントークのロールプレイを3回繰り返します。その都度、相手役から「どこが良かったか」「どこを改善したらいいか」をフィードバックされます。
研修リーダーからもフィードバックを伝えます。
Aさんは、悩みながら何度もビジョンを語り直します。
最後の回に入る前です。
本質的な問いかけが、研修リーダーから投げかけられました。
「相手を説得しようとしていませんか?
あなたが本当に観たいシーンは何ですか?
会社が今、あなたにお願いしているポジションは、実は、
あなたでなくてもいいんです。会社は持続性を保つことを
大切にしている組織です。
“掛け替えのある体制”でなければ組織としては弱い。
でも、あなたにとって、あなたが、今、そのポジションに
いることには、大きな意味があるんです。
あなただからこそ、あなたが本当に観たいシーンがあるはずです。
あなたが、今、そこに存在する意義、あなたの仕事の意味は、
何なのでしょうか?
残されたビジネス人生を無駄にしないでください。」
10分間。言葉を交わさない「沈黙の休憩」を取りました。
●覚醒するAさん
3回目。
Aさんの表情、語気、メッセージががらりと変わりました。
「俺たちは負けている。俺いやなんだよね、この状態」
「皆よくやってくれている。だからここまで来ている。
だけど、まだまだなんだ」
「地域を代表するような大手の取引を競合からがひっくり返せば、
こちらからアプローチしなくても、お客様から『話を聞きたい』
と電話が入るだろう。どうよ?お客様からクレームじゃない電話だよ」
「でも、そこがゴールじゃない。
そこから一気呵成でトップシェアを獲得して、全国の各支社を
ビックリさせようよ!」
「でも、そこまで行くのには、たぶん3年かかるだろう。
俺たちはサラリーマンだから3年後、今ここにいるメンバー
全員でそのときを迎えられるとはかぎらない。
異動するやつもいるだろう。新しいメンバーも来るかもしれない。
俺自身、ここにいるかもわからない」
「3年後。トップシェアを獲って、だれがどこにいても、俺たちは、
シェア逆転のはじまりになった大手チェーンの店で祝杯をあげよう。
この地を離れた奴が新幹線の駅に降り立つ。
店で、「久しぶり」って挨拶を交わす。
苦労話や自慢話をする。
どれだけうまい酒だろう。
これが、俺のビジョンだ。
一緒に、乾杯しよう」
Aさんのビジョントークを聞いて、相手役の方は、目に涙を溜めています。
胸にありありと描かれているシーン。
上っ面ではない言葉。
「全身全霊で、そのビジョンを実現したい」。
そう思わせるくらい、インパクトのあるビジョントークでした。
●なぜ、支店長のAさんに、こうした変化が起きたのか?
「あなただからこそ、あなたが本当に観たいシーンがあるはずです」。
「あなたが、今、そこに存在する意義、あなたの仕事の意味は、何なのでしょうか?」。
この問いとしっかり向き合ったからこそ、Aさんは、しっかりと自分のビジョンを描いてメッセージを出せたのです。
しかも、準備段階で「クロスAWOT」などを用いて、しっかり論理的に戦略も組み立てていました。
観ることができると信じ、観たいと本当に思っているビジョンだからこそ、なのです。
詳細にご興味のある方は、ミニ体験会にお越しください。